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奨学金の返済ができずに自己破産したらどうなる?

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奨学金の返済ができずに自己破産したらどうなる?

収入減少や失業、傷病などの事情で、奨学金の返還が困難になった場合、自己破産を検討する方は少なくありません。自己破産とは、裁判所を介して一定の財産を処分することで、借金の返済義務を免除(=免責)してもらう手続きです。

ここでは、自己破産の基礎知識も踏まえたうえで奨学金と自己破産について考えていきましょう。

■自己破産するための条件
まず、奨学金も性質上、借金であることには変わりないため、自己破産手続きを利用して奨学金の返済義務を免除してもらうことは可能です。ただし、自己破産手続きを利用する際は、以下の条件を満たす必要があります。

●「支払不能」であること
「支払不能」とは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」(破産法2条11号)です。要は、収入や財産が不足して、客観的に見て長期にわたる返済ができなくなった状況をいいます。

支払不能は、以下の事情などを加味して、裁判所が判断します。
・借金総額
・借金の内訳
・総資産額
・資産内容
・収入額や安定性
・生活費の状況


●「免責不許可事由」に該当しないこと
「免責不許可事由」とは、借金の原因や不当行為などの問題があるため、自己破産による免責が認められない事情のことです。奨学金破産をする際の一番の障壁となりうるのがこの免責不許可事由です。

免責不許可事由には大きく分けて「借入の経緯に関すること」と「破産手続きを妨害すること」の2つがあります。問題になることが多いものとしては以下の通りです。
【借入の経緯に関すること】
・ギャンブルや浪費
・転売行為

【破産手続きを妨害すること】
・破産管財人(免責手続きの多くを実施する者)に協力しない
・財産を隠す
・債権者を明かさない
・債権者を平等に扱わない

もっとも、免責不許可事由に該当しても、裁判所は諸事情を考慮して免責許可決定を出すことができるため、該当する項目があっても隠さず、弁護士等に正直に事情を話しましょう。

●「非免責債権」ではない借金であること
税金などの公的な債権、損害賠償金・慰謝料、交通違反等の罰金などは「非免責債権」に該当し、免責の対象に含まれません。しかし、奨学金は非免責債権に該当しないため、今回のようなケースでは問題になりません。


■自己破産した場合のデメリット
自己破産をした場合のデメリットもあらかじめ押さえておきましょう。主なデメリットとしては以下のものがあります。

●一定の財産は処分される
不動産や自動車などの高額な資産は手放すことになります。もっとも、一定範囲内の財産(「自由財産」という)は、自由に管理・処分できるため、自己破産を行っても無一文になるわけではありません。自由財産は、99万円以下の現金、破産開始決定後に取得した財産、差押えが禁止されている家具・家電などです。自由財産として手元に残せるかどうかは、具体的な事情によるため、弁護士等の専門家に相談しましょう。

●信用情報に傷がつく(ブラックリストに載る)
自己破産を行うことで、信用情報機関に登録されることになります。いわゆる「ブラックリスト入り」することで、これにより一定期間、新たな借り入れをしたり、ローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることができなくなります。自己破産の場合は、10年程度登録され、この期間を過ぎれば、借入等が可能になります。

●職業制限が生じる
破産手続き中は、一定の職業(資格)に就くことができません。警備員や生命保険募集人、損害保険代理店など、幅広い職業(資格)を含んでいるため、注意しましょう。職業制限は破産手続き中の一定期間に生じるにすぎませんが、一時的であっても仕事ができなくなることに問題がある方は別の選択肢を検討することになります。

●官報に載る
自己破産のデメリットとして挙げられるもののひとつに「破産者の名前等が官報に記載される」があります。これにより、自己破産したことが第三者に知られてしまうリスクがありますが、実際のところ、官報を毎日すみずみまで確認している人はかなり少ないでしょう。そのため、官報に載ることで、周囲の人に知られてしまうことは少ないといえます。

■奨学金返還者の救済制度
奨学金の返済が困難になった場合は、まずは日本学生支援機構の救済制度を利用することをおすすめします。救済制度には、以下の3つがあります。
・減額返還制度
・返還期限猶予制度
・返還免除

●減額返還制度
毎月の返還額を減額する制度で、災害や傷病などの経済的理由により奨学金の返還が困難になった場合で、当初約束した割賦金を減額すれば返還が可能になる者を対象としています。1回の願出につき12か月(1年間)適用され、最長15年(180か月)まで延長できます。

●返還期限猶予制度
返還期限を猶予する制度で、災害や傷病、経済困難、失業などの事情が生じた場合に返還を一定期間先送りする返還期限の猶予を願い出ることができます。返還すべき元金や利子が免除されるわけではありませんが、マイナンバー及び所定の書類を提出するという比較的簡単な手続きで行うことができます。1回の願出につき12か月適用され、最長10年(120か月)まで延長できます。

●返還免除
願出によって、返還未済額の全部または一部の返還を免除できます。返還免除を受けるためには次のケースに該当する必要があります。
・本人が死亡したため、返還ができない
・精神もしくは身体の障害によって労働能力を喪失、または労働能力に高度の制限を有したため、返還ができない

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